フィナステリドはAGA治療薬に用いられる代表的な有効成分で、厚生労働省によって効果が認められている数少ない成分の1つです。世界で初めてAGAに対する有効性と安全性が確認された治療薬で、現在では世界60ヶ国以上でAGA治療薬として用いられています。
フィナステリドにはAGAの原因となる有害なサイトカインの産生を抑制する働きがありますが、中にはフィナステリド錠の服用をやめたいと考えている方もいるようです。
本記事では、フィナステリドの服用をやめた場合に起こり得るリスクや、服用をやめるべきでない人の特徴などについて解説しています。
目次
フィナステリドの服用をやめたらどうなるのか
フィナステリドの服用をやめた場合、次のような事態を招くことが考えられます。
- 薄毛が進行することで髪の毛がAGA治療前の状態へ戻ってしまう恐れがある
- 過去の治療費が無駄になってしまう恐れがある
それぞれについて詳しく解説します。
薄毛が進行することで髪の毛がAGA治療前の状態へ戻ってしまう恐れがある
フィナステリドの服用をやめた場合、一度は改善が見られた薄毛が再び進行することで、髪の毛がAGA治療前の状態へ戻ってしまう恐れがあります。なぜなら、AGAは進行型の脱毛症のためです。
フィナステリドのはたらきは、抜け毛の原因となる有害なサイトカインの産生を抑制することです。しかし、有効成分が肝臓や腎臓で代謝・排泄されると、薬の効果がやがてなくなってしまいます。この状態が続くと、一度は改善が見られた薄毛が再び進行し始めます。
参考:AGAが急激に進行したと感じる原因を解説
過去の治療費が無駄になってしまう恐れがある
フィナステリドの服用をやめた場合、過去の治療費が無駄になる恐れもあります。 フィナステリドを有効成分として配合している代表的なAGA治療薬がプロペシアです。
プロペシアは2005年に厚生労働省によって認可された国内初のAGA治療薬ですが、国内での特許期間は終了しており、2022年現在ではジェネリック医薬品も多数開発・販売されています。
ジェネリック医薬品は正規品のプロペシアより安価ですが、それでも1ヶ月あたりおよそ4,000円程度の治療費が必要です。仮にフィナステリド錠の服用を半年間でやめた場合、4,000(円)×6(ヶ月)=24,000円を無駄にする恐れがあります。
フィナステリドの作用・効果
フィナステリドの作用・効果は、体内の酵素の一種である「5α-リダクターゼ」の活動を阻害することです。5α-リダクターゼは、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、活性が高いジヒドロテストステロン(DHT)へと変換される際、触媒として重要な働きをします。
ジヒドロテストステロンがアンドロゲン受容体に結合すると、有害なサイトカインの一種であるTGF-βが産生されます。TGF-βは脱毛因子とか退行期誘発因子などと呼ばれており、正常なヘアサイクルを乱し、髪の毛の成長期を短縮することが特徴です。
髪の毛の成長期が短縮されると、十分に成長できない弱々しい髪の毛が増え、髪の毛全体のボリュームを減少させます。 また、生涯のヘアサイクルの回数には上限があり、TGF-βの働きによって早期にヘアサイクルを終えた毛穴が増えると、徐々に薄毛が進行します。
5α-リダクターゼは特に前頭部や頭頂部に多く分布しているため、フィナステリド錠を服用することで5α-リダクターゼのはたらきが阻害され、AGAの特徴でもある「M字ハゲ」や「O字ハゲ」の予防にもつながるでしょう。
日本皮膚科学会はAGA治療にフィナステリドの使用を強く推奨
日本皮膚科学会では、AGA治療にフィナステリドの使用を強く推奨しています。AGA治療の指針となるのが、「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」です。 同ガイドラインは科学的根拠に基づいた情報を選びだし、男性型脱毛症の診療水準を向上させる目的で、日本皮膚科学会によって策定されました。
ガイドラインの中では、AGAの治療法に関してその推奨度を「A・行うよう強く勧める」「B・行なうよう勧める」「C1・行なってもよい」「C2・行なわない方がよい」「D・行なうべきではない」の5段階に分類しており、フィナステリドの内服については、Aランクに位置付けられています。
男性型脱毛症の治療において、行うことを強く進めるAランクの治療法は、フィナステリドの内服の他、デュタステリドの内服、およびミノキシジルの外用しかありません。
フィナステリドの服用をやめるべきでない人の特徴
フィナステリドの服用をやめるべきでない人の特徴として、以下の3点があげられます。
- 服用開始から数ヶ月と間もない
- 服用開始直後の初期脱毛の症状が気になる
- 他のAGA治療薬を試してみたい
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
服用開始から数ヶ月と間もない
フィナステリドの服用開始から数ヶ月と間もない人は、フィナステリドの服用をやめるべきではありません。
フィナステリドに限った話ではありませんが、治療薬を服用したからといって、すぐにAGA治療の効果が実感できるわけではありません。 フィナステリドの効果が実感できるのは、服用を開始してからおよそ6ヶ月~1年後とされています。
服用開始から数ヶ月と間もないうちにフィナステリドの服用を中止すると、その間に必要となった治療費を無駄にする結果となります。
服用開始直後の初期脱毛の症状が気になる
服用開始直後の初期脱毛の症状が気になる人は、フィナステリドの服用をやめるべきではありません。AGA治療薬の服用を開始してからしばらくして起こる、一時的な抜け毛量の増加が初期脱毛です。
個人差もありますが、フィナステリドの初期脱毛の目安期間はおよそ1ヶ月~3ヶ月です。 AGA治療薬の効果があらわれ始めると、それまでに生えていた細くて弱々しい髪の毛が、新たに生えてきた太くて強い髪の毛によって押し出されます。
つまりAGA治療中の初期脱毛は、治療薬による発毛効果の裏返しとも言えます。 初期脱毛が起こっている間は、 ウィッグや帽子を着用しても問題ありません。
他のAGA治療薬を試してみたい
他のAGA治療薬を試してみたいとの理由で、フィナステリドの服用をやめるのはおすすめできません。フィナステリドの効果がなかなか実感できないと、他のAGA治療薬を試してみたくなる気持ちはわかります。
しかし、フィナステリドの効果が出るまでには半年から1年ほど時間を要するため、自分の判断で服用を中止するのではなく、担当の医師に相談することが重要です。 フィナステリドの効果がなかなかあらわれない場合、ミノキシジルなど併用が推奨されている治療薬を使う方法もあります。
フィナステリドの服用をやめるべきタイミング
フィナステリドの服用をやめるべきタイミングとしては、以下のような例があげられます。
- 1年以上服用を続けても効果を実感できない場合
- 初期脱毛期間が長い場合
- 副作用が重大で日常生活に影響が出る場合
- 妊活を開始する場合
- フィナステリドの費用が継続して支払えない場合
- 個人的に輸入したフィナステリドを使用している場合
それぞれについて詳しく解説します。
1年以上服用を続けても効果を実感できない場合
フィナステリドの服用をやめるべきタイミングの1つが、1年以上服用を続けても効果を実感できない場合です。 国内の臨床試験によると、フィナステリドの服用を開始してから1年が経過した場合、およそ58%にAGAの改善効果が見られ、およそ40%に現状維持の効果が見られるとされています。
もしフィナステリドの服用を1年以上続けても、AGAの改善効果や現状維持効果が実感できない場合、AGA以外の原因によって抜け毛が増えている可能性も疑われます。その場合、かかりつけの医師などに相談すると良いでしょう。
参考:AGAが完治した人はいるかどうか解説
初期脱毛期間が長い場合
フィナステリドの服用をやめるべきタイミングとして、初期脱毛の期間が目安よりも長い場合もあげられます。初期脱毛には個人差がありますが、平均するとおよそ1ヶ月から3ヶ月のうちに終息します。
3ヶ月以上経っても抜け毛の量が減らない場合、AGA以外の原因によって抜け毛が起こっている可能性も疑われるため、なるべく早めに担当医に相談しましょう。
副作用が重大で日常生活に影響が出る場合
副作用が重大で日常生活に影響が出る場合、フィナステリドの服用をやめるべきタイミングと言えるでしょう。フィナステリドの主な副作用としては以下の例があげられます。
1%~5%未満 | リビドー(性欲)の減退 |
1%未満 | 勃起機能不全・精液量の減少・オーガズム障害 |
頻度不明 | 蕁麻疹・発疹・掻痒感・むくみ・肝機能障害・抑うつ症状・乳房の女性化・乳房痛・めまいなど |
フィナステリドの主な副作用がリビドーの減退を始めとした男性機能の低下です。その他の副作用に関しては1%未満もしくは頻度不明であり、日常生活に影響をおよぼすような副作用が起こるリスクはそれほど高くありません。
しかし、フィナステリドの服用にともなって何らかの異常が見られるようであれば、担当医に相談するしましょう。
参考:AGA治療のデメリットについて解説
妊活を開始する場合
妊活を開始する場合も、フィナステリドの服用をやめるべきタイミングと言えるでしょう。前述の通り、フィナステリドの主な副作用がリビドーの減退を始めとした男性機能の低下です。そのため、これから子作りを考えている男性は、一時的にフィナステリドの服用を中止すると良いでしょう。
ただし、フィナステリドの服用を中止してから3ヶ月は、妊活を行わないよう推奨されています。またパートナーが懐妊した場合、フィナステリドに触れさせないよう注意しましょう。妊娠中の女性がフィナステリドに触れた場合、胎児の外生殖器の発育に悪影響をもたらす可能性があります。
フィナステリドの費用が継続して支払えない場合
フィナステリドの服用をやめるべきタイミングとしては、フィナステリドの費用が継続して支払えない場合もあげられます。AGAは進行型の脱毛症のため、発症したら終わりだと考えるのではなく、継続的に治療を続けることが重要です。
しかし、経済的にフィナステリドの費用を支払い続けるのが困難であれば、服用を断念するのも仕方ないでしょう。そのような事態に陥らないためにも、AGA治療を始める前に費用の概算を割り出しておくと良いでしょう。
個人的に輸入したフィナステリドを使用している場合
個人的に輸入したフィナステリドを自分の判断で使用している場合、なるべく早めに服用をやめたほうがよいでしょう。
AGAは早期の治療開始で効果が出やすいとされていますが、それは専門クリニックで検査を受けて、適切な治療を受けることが前提です。 個人的に輸入したフィナステリドを自分の判断で使用した場合、なかなか効果が実感できずにAGA治療が手遅れになることがあります。
AGAは自力で治そうとするのではなく、専門家の診察を受けることが重要です。
フィナステリドのやめどきは自分で判断せずに専門医の判断に従う
フィナステリドのやめどきは、自分で判断するのではなく、専門医の判断に従うのが重要です。そのためにも、AGA治療専門のクリニックを受診するようにしましょう。
皮膚科でもAGAの治療を受けられますが、皮膚科医は皮膚疾患全般に関する専門科であり、AGAの専門家ではありません。AGA治療専門のクリニックには、皮膚科とは異なりAGAに特化した医師が在籍しており、さまざまな症状変化に対して適切な対応が可能です。
ベアAGAクリニックでは、1万人以上の治療実績を持つ院長が専任で治療にあたっています。目的に応じてさまざまな治療コースがあるため、AGA治療を考えている方は、ベアAGAクリニックまでご相談ください。
フィナステリドで効果を実感できなかった場合の対処法
フィナステリドで効果を実感できなかった場合の対処法としては、次の2点があげられます。
- 発毛効果の期待できるミノキシジルと併用する
- 薄毛の原因がAGA以外ではないか検査する
それぞれについて解説します。
発毛効果の期待できるミノキシジルと併用する
フィナステリドで効果を実感できなかった場合、発毛効果の期待できるミノキシジルと併用することがおすすめです。守りのAGA治療薬がフィナステリドなら、ミノキシジルは攻めのAGA治療薬です。
ミノキシジルには血管を拡張して、血液の循環を促進するはたらきがあるため、併用すればより効率的にフィナステリドを頭皮へと送り届けられます。また、ミノキシジルには毛母細胞の死滅を抑制し、発毛シグナルを活発化させるはたらきなども期待されています。
参考:プロペシア(フィナステリド)だけで十分な薄毛対策は可能かどうか解説
薄毛の原因がAGA以外ではないか検査する
フィナステリドで効果を実感できなかった場合、薄毛の原因がAGA以外ではないか検査することも重要です。AGA以外の脱毛症としては、以下のような例があげられています。
円形脱毛症 | 免疫系の異常によって自己の毛包が攻撃され、まとまった量の抜け毛を引き起こす脱毛症 |
脂漏性脱毛症 | 皮脂の過剰な分布によって頭皮環境が悪化し、抜け毛のリスクを高める脱毛症 |
機械性脱毛症 | 髪の毛や頭皮に対する物理的なダメージによって抜け毛の量が増える脱毛症 |
上記の脱毛症に対してはフィナステリドの効果が期待できません。
しかし、適切に対処することで上記の脱毛症も改善が期待できるため、自分の判断で放置せず、なるべく早めに専門医まで相談しましょう。
フィナステリドの服用をやめてよかったとの声もあり
フィナステリドを服用していた方の中には、「フィナステリドの服用をやめてよかった」とおっしゃる方もいます。副作用がひどいと感じている方や、発毛効果が得られないと感じている方の場合、フィナステリドをやめてよかったと感じるようです。
しかし、フィナステリドの副作用のリスクはそれほど高くありません。また、フィナステリドはそもそも抜け毛を予防するための治療薬であり、新たに髪の毛を生えさせる効果はそれほど高くありません。
積極的な発毛効果を望むのであれば、フィナステリドとミノキシジルを併用するのがおすすめです。 一時的にフィナステリドの服用をやめてよかったと感じたとしても、長い目で見た場合「やはり服用しておけばよかった」と後悔するケースもあります。フィナステリドの服用に関する疑問がある方は、担当医に相談することが重要です。
フィナステリドの使用前後に血液検査をして効果を測定することがおすすめ
安心してフィナステリドの服用を続けるためには、フィナステリドの使用前後に血液検査をして、効果を測定することがおすすめです。血液検査を行うことで、抜け毛や薄毛の原因がAGAかどうかを特定できます。
AGAが原因の抜け毛であれば、フィナステリドが効果的であることは厚生労働省によって認められており、安心して治療を続けられるでしょう。また、血液検査を行うと肝臓の数値などがわかるため、副作用の心配をせずAGA治療が続けられます。
フィナステリド服用中は献血はやめておく
フィナステリドの服用中は献血をやめておきましょう。フィナステリドを服用中の方が献血した場合、輸血を受けた方に悪影響を与える可能性があります。フィナステリドを服用中はもちろんのこと、服用を中止してから1ヶ月は献血禁止です。
仮に献血した血液を利用して不都合が起こった場合、献血コードを通じて献血者の身元はすぐに割り出されます。悪意がなかったとしても、仮にプロペシアの服用中に献血してしまった場合、献血センターまで速やかに報告しましょう。
フィナステリドの服用をやめたいなどAGA治療に関するご相談はベアAGAクリニックへ
フィナステリドの服用を中止した場合、再び抜け毛の量が増え始め、AGA治療前の状態へ戻ってしまう恐れがあります。AGAは進行型の脱毛症のため、発症したら根気よく治療を続けることが重要です。
副作用の心配がある方や、いつまでフィナステリドの服用を続ければいいのかわからない方、費用面での不安がある方は、ベアAGAクリニックまでご相談ください。 ベアAGAクリニックでは、予算に応じた治療法の提案を行っています。
高額な治療薬の売り込みは一切行いません。 カウンセリングは無料のため、治療に関する疑問や不安など、お気軽に専門のカウンセラーまでお問い合わせください。
執筆者:清水崇裕(ベアAGAクリニック院長、医師、医学博士)
薄毛治療実績1万人以上。薄毛治療以外の医学知識も豊富で、安全に配慮した治療を心がけています。美肌、シミ、シワ等も含めトータルなエイジングケアをサポート致します。最近髪が細くなってきた、頭頂部が気になる、髪が⽔に濡れてボリュームが減るのが恐い、など薄⽑に対するどんなお悩みでもお気軽にご相談ください。患者様の期待に応え、当院で治療を受けてよかったと⾔っていただけるようなクリニックを⽬指して参ります。
資格:医師・医学博士・放射線科専⾨医・⽇本医師会認定産業医・⽇本抗加齢医学会会員・⽇本医学放射線学会会員
薄毛にお悩みの方は必ずお力になります。ベアAGAクリニックにご相談ください。
ベアAGAクリニック院長 清水崇裕
参考:AGAのオンライン診療のデメリットを解説
参考:デュタステリドが効かないと感じる原因
参考:フィンペシアによる副作用について解説