男性に見られる薄毛はAGA(男性型脱毛症)が主な原因だと考えられています。AGAは進行型の脱毛症のため、発症が疑われる場合はなるべく早めに対処することが重要です。 AGAを始めとして抜け毛を引き起こす病気はたくさんありますが、AGA以外の脱毛症は、ストレスが主な原因となる可能性もあります。 本記事ではAGAとストレスとの関係やAGAの原因、ストレスによる抜け毛の改善方法、およびAGAを発症した場合の治療法などについて解説します。
目次
AGAの発症はストレスが直接的な原因とはいえない
ストレスはAGAの発症にあまり起因しないと言われています。ただし、ストレスが原因で薄毛や抜け毛が起こる場合もあり、例として粃糠性脱毛症(ひこうせいだつもうしょう)や休止期脱毛症などが挙げられます。粃糠性脱毛症や休止期脱毛症は、男性だけでなく女性も発症する可能性があります。 円形脱毛症もかつてはストレスが原因で起こると考えられていましたが、近年は自己免疫疾患説が有力です。ストレスは精神的なもののみでなく、疲労や睡眠不足、急激な温度変化など身体的ストレスも抜け毛のリスクを高めます。
AGAは遺伝的な影響が主な発症の原因
AGAは英語の「Androgenetic Alopecia」を略したものです。Androgeneticは「androgens」と「genetic」を組み合わせた言葉で、それぞれ「男性ホルモン」「遺伝的」といった意味があります。AGAは遺伝的な要因によって発症リスクが高くなる脱毛症です。 遺伝的に体内の酵素の一種である5α-リダクターゼがどれくらい活発に働くのか、および男性ホルモン受容器(アンドロゲンレセプター)の感受性がどれくらい高いのかによって、AGAを発症する可能性が上下します。AGAは遺伝的な影響が強い病気であり、進行性の脱毛症でもあるため、いったん発症すると自然に治ることは期待できません。
AGAを発症する仕組み
AGAを発症する仕組みを簡単にまとめると次のようになります。
- テストステロンが強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変化する
- ジヒドロテストステロンとアンドロゲンレセプターが結合する
- TGF-βと呼ばれるサイトカイン(分泌性蛋白の一種)が産生される
- ヘアサイクル中の「成長期」が短縮され薄毛が進行する
AGA発症者の体内では、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、より強力な男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロンへと盛んに変化しています。その変化の際に重要な役割を果たすのが、酵素の一種である5α-リダクターゼです。
ジヒドロテストステロンが、男性ホルモン受容器であるアンドロゲンレセプターに結合すると、有害なサイトカインの一種であるTGF-βを産生します。TGF-βは退行期誘発因子とも呼ばれており、健康な髪の毛が成長するヘアサイクルを乱し、抜け毛を引き起こします。髪の毛1本1本につきヘアサイクルは異なっていますが、ヘアサイクルが乱される髪の毛が増えると、徐々にAGAが進行します。
AGA以外の脱毛症はストレスが原因になることがある
AGAは主に遺伝が原因で引き起こされますが、AGA以外の脱毛症に関してはストレスが原因となる可能性もあります。 ストレスが原因の抜け毛と自分で判断してセルフケアで改善を試みたものの、実際にはAGAを発症していた場合、取り返しがつかない結果にもなりかねません。抜け毛の原因は実に様々であるため、必ず専門医に見てもらいましょう。
ストレスが原因で薄毛や抜け毛が起こる理由
ストレスが原因となって薄毛や抜け毛が起こる理由は次の通りです。
自律神経のバランスが乱れる
ストレス状態が続くと、自律神経のバランスが乱されます。自律神経のバランスが乱れると交感神経が優位に傾き、血管の収縮と血行不良を招きます。その結果、栄養不足に陥った髪の毛が抜けやすくなります。
睡眠の質が低下する
ストレスを抱えていると睡眠の質が低下する傾向にあります。髪の毛は毛母細胞の分裂によって成長しますが、睡眠の質が低下すると、細胞分裂が不活発になります。その結果、髪の毛の成長に悪影響をおよぼすのです。
ホルモンバランスが乱れる
ストレスは自律神経だけでなく、ホルモンバランスも乱します。ホルモンバランスが乱れると皮脂の分泌量が増大し、頭皮の環境が悪化します。髪の毛が成長する土壌である頭皮の環境が悪化すると、抜け毛や薄毛のリスクが高まるのです。
体内の亜鉛が不足する
ストレス状態が続くと血行が悪くなる傾向が高く、血行が悪い状態を回復させる際に活性酸素が発生します。活性酸素を分解する際、体内の亜鉛が消費されます。亜鉛は髪の毛の成長に欠かせない必須ミネラルであるため、亜鉛が不足すると抜け毛のリスクを高めます。
抜け毛の原因がストレスかAGAかを自己で判断するのは難しい
抜け毛の原因は実にさまざまです。ストレスによる抜け毛が疑われる場合は、根本的な原因の解決が求められます。AGAによる抜け毛が疑われる場合は、早い段階でクリニックの治療を受ける必要があります。ただ、抜け毛の原因がストレスかAGAか自分で判断するのは難しいので、必ず専門医の診察を受けるよう心がけましょう。
ストレスによる薄毛や抜け毛を改善する方法
ストレスによる薄毛や抜け毛を改善するために、以下の方法が挙げられます。
- 十分な睡眠をとる
- 食生活を見直す
- ストレス解消方法を見つける
- 育毛剤・育毛シャンプーを使用する
ストレスによる薄毛や抜け毛の多くは生活習慣の乱れが原因で起こります。次のような方法で薄毛や抜け毛を改善しましょう。
十分な睡眠をとる
ストレスによる薄毛や抜け毛を改善するには、十分な睡眠をとることが欠かせません。私たちの髪の毛は毛母細胞の分裂によって成長しますが、寝ている間に細胞分裂が活発化します。また、十分な睡眠時間を確保するだけでなく、質のよい睡眠を意識することも重要です。 質のよい睡眠を得るためには、昼と夜とでメリハリをつけることが重要です。日中にしっかりと身体を動かすと、夜になって自然な眠りが訪れます。 寝る直前までスマホやテレビなど電子機器を見ていると、脳が興奮して睡眠の質を低下させます。就寝の1時間前には電子機器から目を離し、落ち着いた気分で寝るようにしましょう。睡眠の質を高める簡単な方法として、朝日を浴びることも効果的です。
食生活を見直す
ストレスによる薄毛や抜け毛を改善するには、食生活を見直すことも必要です。最近は若い男性もダイエットに取り組む方が増えています。ただ、極端なダイエットによって栄養が不足すると、髪の毛の成長に悪影響をおよぼすため、抜け毛や薄毛のリスクを高める結果となります。 髪の毛の成長にはタンパク質や亜鉛、ビタミンB群などが必要ですが、特定の栄養素を摂ったからといって、髪の毛の成長を促進することはできません。いろいろな食品からバランスよく栄養を摂取することで、髪の毛の成長を促したり、頭皮の環境を改善したりする効果が期待できます。
ストレス解消の方法を見つける
ストレスによる薄毛や抜け毛を改善するには、ストレス解消の方法を見つけることが近道です。ストレス解消の方法は人それぞれです。趣味に没頭することがストレス解消になる方もいれば、身体を適度に動かすことがストレスの解消につながる場合もあります。 会社勤めの方の中には、休日も仕事のことを考えてしまいストレスの原因となっている方も少なくありません。趣味に没頭する時間を作れば、少なくともその間は仕事のことを考えずに済むでしょう。また、適度な運動はストレスの解消になることはもちろん、睡眠の質を高める結果にもつながります。
育毛剤・育毛シャンプーを使用する
育毛剤や育毛シャンプーの活用でストレスによる薄毛や抜け毛の改善につながることがあります。育毛剤には、髪の毛が太く丈夫に育つのをサポートをする働きがあります。発毛を促進するというよりは、現在生えている髪の毛を強くするのが育毛剤の役割です。お風呂上りに適量を頭皮に塗布するのが一般的です。 育毛シャンプーには、頭皮の環境を良好に保ち、髪の毛の生える土壌を整える働きがあります。市販のシャンプーには髪の毛や頭皮にダメージを与える成分が含まれていることもあるので、抜け毛や薄毛を予防するのであれば、アミノ酸系やベタイン系のシャンプーを選ぶとよいでしょう。
AGAの診断にはクリニックの受診が必要
AGAの発症が疑われる場合は、自力での治療ではなくAGA治療を専門とするクリニックを受診する必要があります。クリニックでは問診や視診、触診をおこない、AGAを発症しているかどうかを判断します。AGAのほとんどは、問診や視診、触診で判別可能です。 また、AGAの治療薬が有効かどうかを確認するため、血液の検査をおこなう場合もあります。最近はインターネットでAGAの検査キットが販売されていますが、検査キットでできるのはAGA発症の可能性を知ることだけです。実際にAGAを発症しているかどうか判断するには、医師の診察を受ける必要があります。
AGAの場合は早期に治療を開始するのがおすすめ
AGAの発症が疑われる場合、早期に治療を開始するのがおすすめです。日本皮膚科学会が策定するAGA(男性型脱毛症)のガイドラインによると、「AGAは思春期以降に始まり徐々に進行する脱毛症である」と定義されています。 引用元:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版 つまりAGAを発症した場合、完治は難しいと言われています。ただ、AGAは緩やかに進行する脱毛症でもあるため、早期に治療を開始することで年相応の毛髪量まで回復させる効果は期待できます。 あきらめて抜け毛や薄毛を放置してしまうと、徐々に毛根が死滅しはじめます。毛根が死滅した毛穴からは二度と髪の毛が生えてこないため、AGAが手遅れな状態になることを防ぐためにも早めに治療を始めることが不可欠なのです。
AGAを治療する方法
AGAは適切に治療をおこなうことで、年相応の毛髪量を取り戻したり、髪の毛全体のボリュームを増したりする効果が期待できます。AGAを治療する方法としては、以下のような例が挙げられます。
- 内服薬
- 外用薬
- 注射
- レーザー
- サプリメント
- シャンプー等
次項でAGAを治療する方法について詳しく解説します。
基本的には内服薬による投薬の治療が行われる
AGAを治療する場合、基本的には内服薬が用いられます。AGA治療の内服薬としては、以下のような治療薬を使用するのが一般的です。 治療は中長期的に継続することがおすすめです。
治療薬 | 効果 | 副作用 |
フィナステリド内服薬 | 5α-リダクターゼの働きを阻害。テストステロンがジヒドロテストステロンへと変化するのを抑制。 | 男性の性的な機能を減退させる(性欲の低下など)。 |
デュタステリド内服薬 | 1型と2型両方の5α-リダクターゼの働きを阻害、フィナステリド内服薬よりも高い発毛効果が期待されている。 | 男性の性的な機能を減退させる(性欲の低下など)。 |
ミノキシジル内服薬 | 血管を拡張して血液の循環を促す。IGF-1やVEGF、KGFなど、発毛を促す因子を産生しやすくする。 | 心臓への負担を増す。めまいや動悸、息切れなどが代表的な副作用。 |
症例によっては他の治療法も用いられる
AGAの進行度によっては内服薬だけでなく、その他の治療法も用いられます。代表的な治療法は以下のとおりです。
ミノキシジル外用
発毛にかかわる因子を促進する、ミノキシジル外用薬を頭皮に塗布する治療法です。内服薬と合わせて用いることで、発毛の効果をさらに高められます。
メソセラピー
髪の毛の成長に必要な因子(グロースファクター)やサイトカインを、注射器などを用いて頭皮下に注入する治療法です。投薬による治療より早期の改善が期待できます。
LLLT
LLLTは低出力レーザーによる治療法です。レーザーを照射することでATPの産生量が増加し、ヘアサイクルを成長期へと導きます。
サプリメント
髪の毛の健全な成長に欠かせない亜鉛やビタミン、タンパク質といった栄養素を効率的に摂取する目的で用いられます。
AGAの治療についてのご相談はベアAGAクリニックへ
AGA自体は遺伝的な要因が深く関わっており、根本的に改善するためには早期の治療が欠かせません。ただ、ストレス状態が続くと、髪の毛の成長に悪影響をおよぼす可能性もあります。そのため、AGAの治療と平行して、ストレスによる抜け毛のリスクを避けることも重要です。 ベアAGAクリニックでは、投薬による治療だけでなく、外用薬やメソセラピー、低出力レーザーなどさまざまな治療法を駆使し、薄毛のお悩みを解決しています。 ベアAGAクリニックでは無料カウンセリングをおこなっており、治療の方法や薬の種類、費用など1人1人に合ったプランを提案しています。無理に治療を勧めることは一切ありません。薄毛を予防したい方や薄毛が気になっている方は、カウンセラーまでなんでもご相談ください。
執筆者:清水崇裕(ベアAGAクリニック院長、医師、医学博士)
薄毛治療実績1万人以上。薄毛治療以外の医学知識も豊富で、安全に配慮した治療を心がけています。美肌、シミ、シワ等も含めトータルなエイジングケアをサポート致します。最近髪が細くなってきた、頭頂部が気になる、髪が⽔に濡れてボリュームが減るのが恐い、など薄⽑に対するどんなお悩みでもお気軽にご相談ください。患者様の期待に応え、当院で治療を受けてよかったと⾔っていただけるようなクリニックを⽬指して参ります。
資格:医師・医学博士・放射線科専⾨医・⽇本医師会認定産業医・⽇本抗加齢医学会会員・⽇本医学放射線学会会員
薄毛にお悩みの方は必ずお力になります。ベアAGAクリニックにご相談ください。
ベアAGAクリニック院長 清水崇裕
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