薄毛にはさまざまな原因がありますが、なかでもAGAは多くの男性を悩ませる脱毛症として知られています。専門的な調査によると、20代であっても、およそ10%の男性がAGAを発症しているといったデータもあります。 50代までにはおよそ半数の方が発症するAGAは、男性にとって身近で困ったトラブルといえるでしょう。
AGAを発症した場合、完治することはあるのでしょうか。また、完治が難しい場合、どのくらい治療を続ければよいのでしょうか。AGAのメカニズムや発症した場合の治療法、効果が現れるまでの目安となる期間、治療を続けるにあたって気を付けたい点を紹介します。
目次
AGAが完治した人はいない
AGAが完治した人はいません。AGAは男性ホルモンが原因の脱毛症であり、遺伝的要因によって発症リスクが高くなります。
AGAを発症した場合、適切な治療を受けない限り、抜け毛や薄毛を急激な進行ではないものの確実に進行させるのが特徴です。ただ、適切な治療を受けることで症状の進行を抑えたり、髪の毛のボリュームを増やす可能です。
AGAが完治せずに進行を続ける原因
AGAが完治せずに進行を続ける原因として、主に次の2つの原因が挙げられます。
- AGAになるとヘアサイクルの「成長期」が通常より短くなり髪が育ちにくくなる
- 脱毛因子を放出するジヒドロテストステロンが作られることで毛髪の成長期が短くなる
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
AGAになるとヘアサイクルの「成長期」が通常より短くなり髪が育ちにくくなる
AGAを発症すると、髪の毛が太く長く成長する「成長期」が短くなり薄毛が始まります。ヘアサイクルは髪の毛の成長期、退行期、休止期、脱毛期に分けられます。
成長期 | 毛母細胞の分裂が活発化し、髪の毛が太く長く成長する期間。ヘアサイクルのおよそ85~90%を占める。 |
退行期 | 毛母細胞の分裂が鈍化し、毛球が衰える期間。ヘアサイクルのおよそ1%を占める。 |
休止期 | 毛母細胞の分裂が完全に停止し、髪の毛の付け根が毛穴から離れ始める期間。 |
脱毛期 | 髪の毛が抜け落ち、次の発毛までを待つ期間。休止期と合わせて、ヘアサイクルのおよそ10~15%を占める。 |
日本人の頭髪はおよそ10万本とされますが、ヘアサイクルは髪の毛1本1本毎に異なります。健康な髪の毛の場合、成長期が2~5年(女性の場合は3~6年)続き、その後、髪の毛が衰えて抜け落ちる退行期、休止期、脱毛期を迎えます。
ヘアサイクルが乱れて髪の毛が伸びる成長期が短くなると、細く短い髪が多くなります。成長期が短くなるにも関わらず退行期の期間に変化はなく、休止期の期間は長くなるため、髪全体のボリュームが少なくなります。 生涯に起こるヘアサイクルの回数は限られており、おおよそ20~40回とされています。ヘアサイクルを終えた毛穴では毛母細胞が死滅するため、再び髪の毛が生えてくることはありません。AGAを完治した人がいないのもそのためです。
脱毛因子を放出するジヒドロテストステロンが作られることで毛髪の成長期が短くなる
AGAが完治せずに進行を続ける原因として、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)の影響も挙げられます。ジヒドロテストステロンは、同じく男性ホルモンであるテストステロンがより強力化したものです。 ジヒドロテストステロンが、男性ホルモン受容器(アンドロゲンレセプター)に結合すると、脱毛因子であるTGF-βを産生します。
TGF-βは退行期誘発因子とも呼ばれており、髪の毛の成長期を短縮する働きがあります。 TGF-βによって成長期を短縮した毛穴が徐々に増えることで、抜け毛や薄毛もまた緩やかに進行するのです。ジヒドロテストステロンの産生や、アンドロゲンレセプターの感受性には遺伝が深く関わっています。
AGAの治療法4選
AGAが完治した人はいませんが、適切な治療を受けることで症状の進行を遅らせ、髪の毛のボリュームを増すことは期待できます。AGAの代表的な治療法としては、以下の4つが挙げられます。
- ミノキシジル
- 内服薬
- メソセラピー
- 低出力レーザー
ミノキシジル
ミノキシジルはAGAの治療薬として認可された、世界で初めての医薬品です。もともとは高血圧の治療薬として用いられていたのですが、発毛効果が認められたことから、低用量のミノキシジル外用薬が開発されました。 ミノキシジルの効果、および副作用は以下の通りです。
期待できる効果 | 副作用の可能性 |
血管を拡張し、血液の循環を促す 発毛シグナルを促進する 毛母細胞の死滅を抑制する | 頭皮のかゆみや赤み アレルギー症状 初期脱毛 |
ミノキシジルは血管を拡張し、血液の循環を促す作用があります。また、発毛シグナルを促したり、毛母細胞の死滅を抑制したりするはたらきも期待されています。 ミノキシジル外用薬は副作用のリスクが低い医薬品です。
ただ、人によっては頭皮のかゆみや赤み、アレルギー症状を起こすことがあります。初期脱毛は治療を始めてからしばらく、抜け毛が一時的に増える現象のことですが、発毛の効果の裏返しとも考えられます。
参考:ミノキシジルが効かない人の原因や対処法を解説
内服薬
AGA治療にはプロペシアやザガーロ、ミノキシジルタブレット(ミノタブ)などの内服薬が用いられます。効果や副作用は以下の通りです。
治療薬名 | 期待できる効果 | 副作用の可能性 |
プロペシア | 抜け毛を予防する | 勃起不全、制欲減退など |
ザガーロ | 抜け毛を予防する | 勃起不全、制欲減退など |
ミノタブ | 血管を拡張する・血行を促進する・発毛を促す | 心臓への負担を増す |
プロペシアやザガーロは、AGAの原因となるジヒドロテストステロンの産生を抑制し、抜け毛を予防する効果が期待されています。ザガーロには、プロペシアよりも高い発毛効果が期待されています。 プロペシアとザガーロの主な副作用は、勃起不全や制欲減退です。
プロペシアやザガーロを服用した5%未満の方に、射精障害や勃起障害、精液量の減少などが見られます。 ミノタブには外用薬よりも高い発毛の効果が期待されています。主な副作用は心臓への負担を増すことです。ミノタブを服用した場合、めまいや息切れ、動悸、血圧の低下といった副作用の可能性があります。
メソセラピー
メソセラピーは、注射器などを用いて体内に薬剤や有効成分を注入する治療を意味します。AGAの場合、髪の毛の成長に必要な因子(グロースファクター)を皮下に注入する手法が採られます。 メソセラピーの効果、および副作用は以下の通りです。
期待できる効果 | 副作用の可能性 |
薄毛の進行を抑制 発毛を促進 | 頭皮のかゆみや赤み 施術後の一時的な頭皮の痛み |
メソセラピーの効果は、薄毛の進行を抑制し、発毛を促進することです。頭皮下にインスリン様成長因子(IGF-1)や血管内皮細胞増殖因子(KGF)、ミノキシジルなどを注入することで、髪の毛の成長をサポートし、新たな発毛を促します。 メソセラピーには副作用のリスクがそれほどありません。人によっては頭皮のかゆみや赤みを生じたり、施術後の一時的な頭皮の痛みを訴えたりするケースがあります。
低出力レーザー
低出力レーザーは、火傷しない程度の出力に抑えたレーザーを皮膚へと照射する治療法です。AGA治療の場合、帽子型の器具をかぶり、頭皮へと低出力レーザーを照射する方法が一般的です。 低出力レーザーの効果、および副作用は以下の通りです。
期待できる効果 | 副作用の可能性 |
発毛 ヘアサイクルを正常化 | ほぼなし |
低出力レーザーには、アデノシン三リン酸(ATP)の産生を増加させ、髪の毛を成長期へと誘発する作用があります。その結果、発毛を促進する効果が得られます。 低出力レーザーには、これといった副作用のリスクがありません。AGA治療薬と併用することで、さらに発毛効果を高めることが期待できます。
AGA治療で効果が期待できるまでに必要な目安期間
AGA治療で効果が期待できるまでに必要な期間の目安は、およそ6ヶ月~1年とされています。個人差があり早い場合は3ヶ月で発毛の効果を実感される方もいます。
AGA治療薬のなかでも、ミノキシジルタブレットには高い発毛効果が期待されていますが、服用したからといってすぐに髪の毛が生えてくる訳ではありません。 むしろ、ミノキシジルタブレットの服用を開始した場合、しばらくして抜け毛の量が増えることもあります。この現象は初期脱毛と呼ばれており、新しい髪の毛が頭皮下で育っている証拠です。 初期脱毛は平均すると1~2ヶ月ほどで終わり、その後、産毛が徐々に成長し始めます。半年から1年すると産毛が太く・強く成長し、徐々に発毛の効果が実感できるようになります。
AGAの治療において注意すべきポイント
AGAは進行型の脱毛症であるため、完治する人はいません。そのため、発症したら根気強く治療を続けることが求められます。長期にわたって治療する場合、後悔しないよう次のような点に注意しましょう。
- AGA治療における目標やゴールを設定する
- AGA治療を医師の判断なく中断しない
- 女性はAGA(男性型脱毛症)専用薬品を使用しない
AGA治療における目標やゴールを設定する
AGAの治療において注意すべき点として、目標やゴールを設定することが挙げられます。AGAは進行型の脱毛症であるため、完治する人はいません。そのため、いつまで治療を続けるのかが難しい問題となります。
治療を開始する時点でどのような髪型になりたいのか、明確にイメージしておくことが重要です。薄毛の範囲が狭くなればそれでよしとするのか、それとも周りに髪が薄いと思われないようになりたいのか、理想像をはっきりさせておきましょう。 また、ゴールを設定することもAGAの治療において注意すべき点です。薄毛は男性にとって非常にデリケートな問題ですが、50代になるとほぼ半数の方が何らかの形で薄毛になってきます。
- 子どもが高校を卒業するまで
- 周りに薄毛の人が増えてくるまで
- 自分自身が薄毛を気にしなくなるまで
このようなゴールを設定することで、薄毛の治療を長期にわたって続けやすくなります。AGA治療の効果は人によって異なるので、他人の意見は参考にする程度にしておき、自分なりのゴールを設定するのがおすすめです。
AGA治療を医師の判断なく中断しない
AGA治療において注意すべき点としては、医師の判断なく中止しないことも挙げられます。AGA治療を始めた方の多くに発毛が見られますが、効果が出たからと自分の判断で治療を中断した場合、再び薄毛になるリスクが高いです。 一定の効果が見られた場合、治療薬の種類を変更したり、減薬したりできるケースもあります。
ただ、髪の毛や頭皮の状態を正確に見極めるのはとても難しいため、必ず医師による判断が必要となるのです。 自分の判断で治療薬の服用を中断して再びAGAが進行した場合、治療を始めた当初より薄毛が悪化することもあります。治療を中断したい場合や、薬の量を減らしたい場合は、必ず医師に相談しましょう。
参考:AGA治療にやめどきはあるのか解説
女性はAGA(男性型脱毛症)専用薬品を使用しない
薄毛は男性だけでなく、多くの女性を悩ませる問題でもあります。女性の薄毛も専門のクリニックで治療できる時代となっていますが、原則としてAGA専用の治療薬を服用することは禁止されています。 AGA専用の治療薬としてはプロペシアやザガーロが挙げられますが、両剤の目的は男性ホルモンの一種であり、AGAの原因となるジヒドロテストステロンの産生を抑制することです。
ジヒドロテストステロンには思春期以降に脱毛因子を放出するはたらきがあるのですが、思春期以前には男性らしい身体を作ったり、生殖器を発達させたりする重要な働きを持ちます。 そのため、妊娠中の女性がプロペシアやザガーロを服用した場合、胎児の成長に悪影響をおよぼす可能性があるのです。医師によっては服用はもちろんのこと、プロペシアやザガーロに触れるのも禁じるケースがあります。
AGAが完治する未来へ現在さまざまな技術が開発中
現在のところAGAが完治した人はいませんが、薄毛が完治する未来に向けて、次のような技術が開発されつつあります。
- Follica社の医療器具・塗り薬・スマートフォンのアプリを連動させた毛髪再生医療技術「RAIN」
- Fidia社にて血管外科医が開発を進める塗り薬「Lotion」
Follica社の医療器具・塗り薬・スマートフォンのアプリを連動させた毛髪再生医療技術「RAIN」
アメリカのバイオテクノロジー企業であるFollica社では、医療器具と塗り薬、スマートフォンアプリを連動させた毛髪再生医療技術である「RAIN」を開発中です。 専用の医療器具と塗り薬を併用し、髪の毛や頭皮の状態をスマートフォンで医師に確認してもらうのが特徴です。
現在行われているAGA治療は、残っている毛包にアプローチしますが、「RAIN」では活動を停止した毛包を再生させることにも重点を置いています。 2020年には臨床試験が最終段階のフェーズ3に入るといった情報もあり、FDA(アメリカ食品医薬品局)の認可が下りれば、近い将来、新たなAGA治療法として日本でも導入されるかもしれません。
Fidia社にて血管外科医が開発を進める塗り薬「Lotion」
イタリアの製薬会社であるFidiaでは、2018年の12月に「TLINOV Lotion」の販売を開始しました。「TLINOV Lotion」には脱毛を抑制し、髪の毛を強く成長させる働きが期待されています。 専用のシャンプーとサプリメントを併用することで、誰でも簡単に自宅で発毛に取り組める点が特徴です。
同社ではAGA治療薬である「Brotzu Lotion」の開発も進行中であり、円形脱毛症の子どもに施した臨床試験で高い発毛効果を実現しています。近いうちにイタリア国内、もしくはアメリカで商品化される予定となっており、薄毛に悩まされている方にとっては朗報といえるでしょう。
AGA治療に関するご相談はベアAGAクリニックへ
AGAは進行型の脱毛症であり、現在のところ完治した人はいません。しかし、適切な治療を受けることで、AGAの進行を遅らせたり、年齢に見合った髪の毛の量を取り戻すことは可能です。
医師と相談の上でAGA治療の目標やゴールを設定し、後悔しないように治療を続けることが重要です。AGA治療に関する研究は日ごとに進歩しており、近い将来、画期的な治療薬が登場する可能性もあります。 適切なAGA治療を受け、薄毛の進行をなるべく遅らせるとよいでしょう。
ベアAGAクリニックでは、目的やご予算に応じた治療法をいくつもご用意しております。薄毛や抜け毛に関するお悩みは、当院までご相談ください。AGAが手遅れな状態になる前に早期での治療をおすすめします。
執筆者:清水崇裕(ベアAGAクリニック院長、医師、医学博士)
薄毛治療実績1万人以上。薄毛治療以外の医学知識も豊富で、安全に配慮した治療を心がけています。美肌、シミ、シワ等も含めトータルなエイジングケアをサポート致します。最近髪が細くなってきた、頭頂部が気になる、髪が⽔に濡れてボリュームが減るのが恐い、など薄⽑に対するどんなお悩みでもお気軽にご相談ください。患者様の期待に応え、当院で治療を受けてよかったと⾔っていただけるようなクリニックを⽬指して参ります。
資格:医師・医学博士・放射線科専⾨医・⽇本医師会認定産業医・⽇本抗加齢医学会会員・⽇本医学放射線学会会員
薄毛にお悩みの方は必ずお力になります。ベアAGAクリニックにご相談ください。
ベアAGAクリニック院長 清水崇裕
参考:皮膚科とAGAクリニックで受けられるAGA治療法・費用面の違いについて解説
参考:フィナステリドの服用をやめたらどうなるのか解説